2015年07月06日

君はもういない。

かつて僕には、大親友がいた。

そいつの名前は剛。

僕の家に剛と一緒に居るときに、どうでもいいことで喧嘩をして、そして、二度と会えなくなった。




「なあ、2組の恵ちゃんって超可愛いよなー。」

いつものように僕と剛は、どうでも良い話しをしていた。

「え?僕は2組なら景子ちゃんが一番好きだけど?」

「いやいや、恵ちゃんだって。俺は間違いなく学校で一番可愛いと思ってるぜ。」

「え?恵ちゃんって普通じゃん。というかお前って、ストライクゾーン広いのな。」

この発言の何がいけなかったのか、剛は急に怒りだし、「お前は絶対に許してやんねー。」と言って、走って僕の家から出て行ってしまった。

それから3週間、僕が話しかけても無視される日々が続いていた。

謝っても謝っても、許してもらえる気配がない。

もう完全に嫌われてしまったのだろうか。僕は学校に行くのが段々と嫌になってきた。だけど、諦めてはいなかった。いつか許してもらえて、そしてまた二人で馬鹿なことを話せる日が来ると信じていたから。

そんなある日だった。自宅に、剛の家から電話があった。

「はい、山本ですけど。」

「・・・。」

「剛?剛だよな?なんか言えよ。」

「山本くん。私は剛の母です。落ち着いて聞いて欲しいことがあるんだけど。」

「え?剛のお母さんですか?はい。なんでしょう。」

僕はその時、とても嫌な感じがした。剛の母親の声から、とても思い詰めたような感じがしたから。

「剛は・・・剛は・・・交通事故に遭って、昨日、死んじゃったの。」

僕はそのことを聞いたとき、思わず聞き返していた。だって、そんなはずはないから。そんないきなり死ぬ人間なんていないのだから。昨日だって学校で会ったし、また月曜日に会えるはずだし。

だけど・・・だけど・・・、それは本当のことだった。剛は、死んでしまったのだ。

僕は、剛に絶対に許さないと言われた身ではあったのだけれど、剛の葬儀にはちゃんと出た。それは、僕が剛のことを大親友だと思っているという気持ちに変わりはなかったし、何より、剛の母親から参加してほしいと言われたからだ。

そして、葬儀が終わり、家に帰った僕は、なんだかやるせない気持ちになっていた。

どうしてあの時、あんなことを言ってしまったのだろう。どうしてもっと真剣に謝らなかったのだろう。どうして・・・どうして・・・どうして・・・。

いくら悔やんでも、悔やみきれない思いが、僕の中で渦を巻いていた。

結局、剛は僕のことを嫌ったまま死んでしまったのかな。そう考えただけでとても寂しくなり、悲しくなり、自分に対して怒りを感じていた。

それから数週間後、自宅に電話があった。剛の家からだ。

どうやら剛の母親が、剛の部屋で日記を見つけたらしく、僕に読んで欲しいとのことだった。

僕は急いで支度をして、自転車に乗って、剛の家まで飛ばしていった。

剛の家に到着し、チャイムを鳴らすと、中から剛の母親が出てきて、中へ通された。

剛の家に入るのは久しぶりだった。本当に久しぶりだった。それだけで懐かしい思いでいっぱいになり、泣きそうになった。

リビングに通された。そして「見て欲しいというのはこの日記。」と、一冊の赤いノートを差し出された。

1ページ、1ページ、僕は日記を読み上げて行く。僕との思い出がたくさん日記には記されていた。

そして、あるページで手が止まった。

その日は、僕と剛が喧嘩をした日だった。

『今日はジローとケンカをした。恵ちゃんは本当に可愛いのに、ジローは可愛くないとか言って、おまけに俺をストライクゾーンが広い人間って言ってきた。本当に腹が立った。バカにするのも大概にしろよ。俺はストライクゾーンが広いわけじゃなくて、お前とは好みが違うってだけなんだから!!』

本当に怒っている感じだった。申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、ページをめくっていく。

『今日もジローが俺に謝ってきた。本当は許してあげてもいいけど、なんか俺が怒っている理由がわかっていないみたいだし、面白いから1か月くらい放置しておこう。そうすれば友情も深まるだろ。』

この日記を見たとき、僕はかなり驚いた。『本当は許してあげてもいい』そんなことを剛は考えていたんだ。僕はなんだか救われた気持ちになった。だけど、『面白いから1か月くらい放置しておこう。』はさすがにひどいとは思った。そして何だか、何だか、笑えてきた。剛らしいなって。

それから、剛が交通事故に遭う日まで読み続けた。

読み終わった後は、何だか今までの気持ちが嘘だったかのように、スッキリしたような感じになっていた。

それから僕は、決心をした。二度と剛のような犠牲者がでないようにすると。

その日から、まるで人が変わったように毎日勉強を続けた。毎日、毎日毎日、勉強を続けた。

それから20年後。

僕は大手自動車メーカーの管理職まで上り詰め、そして、自動車事故を99パーセント減らすという夢のような実績をあげた。

この実績は、世界各国で取り上げられ、そして、そのシステムは、あらゆる自動車メーカーで採用されることとなった。

僕がこんなに頑張れたのは、大親友である剛の死があったからだ。いまでも剛のことを思い出すととても悲しい気持ちになるが、そのおかげで、自動車事故を限りなく減らすということができたのだから、世界中の人間は剛に感謝をするべきかもしれない。

僕は、もっと研究を重ね、自動車事故をさらに無くすという目標がある。

過去は変えられないが、未来は変えられる。

剛。お前は今でも僕の大親友だ。

終わり。
posted by ちょっとオタクなプー at 17:32| Comment(0) | 自作小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする